1980年代から1990年代前半は世界の音楽界でハード・ロックやヘヴィ・メタルがチャートを賑わせた時代でした。オルタナティブムーヴメントが到来するまでは音楽界はまさにHR/HMの全盛期だったともいえます。
HR/HMといえばヘヴィネスやスピーディなイメージを持たれる方が多いですが、実は名バラードの宝庫でもあります。
そこでここでは1980年代から1990年代初頭にかけてチャートを賑わせた、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルバンドによる名バラードをご紹介しましょう。
■ミスター・クロウリー/Mr. Crowley(1980年)
オジー・オズボーン/Ozzy Osbourne
オジー・オズボーンの記念すべきソロ1stアルバム「ブリザード・オブ・オズ~血塗られた英雄伝説」に収録された「ミスター・クロウリー」はシングルカットされて全英最高位46位を記録しました。
セールス的には特筆すべき曲ではありませんが、この曲はハード・ロック、ヘヴィ・メタルファン、そして世界中のギタリストにとってアンセムともいっていい曲です。
その理由こそこのアルバムで一躍ギターヒーローの仲間入りをしたランディ・ローズ。
エドワード・ヴァン・ヘイレンとともにギター界に革命を起こしたといわれるこの悲運のギタリストのソロは何十年経っても色あせる事はありません。特にこの曲のセカンド・ソロ(4:20過ぎ)は圧巻の一語に尽きます。
ランディが飛行機事故により25歳の若さで亡くなって37年…しかし彼は、彼のプレーは永久に世界中のファンによって後世まで語り継がれていくことでしょう。
■シスター・クリスチャン/Sister Christian(1983年)
ナイト・レンジャー/Night Ranger
アメリカのハード・ロックバンド、ナイト・レンジャーの2ndアルバム「ミッドナイト・マッドネス」に収録されているこの「シスター・クリスチャン」。シングルカットされたこの曲は全米チャート最高5位を記録し、ナイト・レンジャー史上最高のヒット曲となりました。
この曲でリード・ヴォーカルを務めるのはドラムのケリー・ケイギー。メイン・ヴォーカルのジャック・ブレイズの他にリード・ヴォーカルを取れるメンバーがいるのはナイト・レンジャーの大きな武器です。
アラン・フィッツジェラルドのピアノイントロから徐々に盛り上がってサビで最高潮を迎えるこの曲。ブラッド・ギルスのアーミングを駆使したいかにもブラッド!!なギターソロも素晴らしいです。
ただこの曲のヒットによってバラードバンドのイメージが強くなったナイト・レンジャーはこの後、そのパブリックイメージとの葛藤に苦しみ、苦難のキャリアを歩くこととなります。難しいものですね。
■アローン・アゲイン/Alone Again(1984年)
ドッケン/Dokken
1980年代前半にアメリカに吹き荒れたLAメタルムーブメント。そこから生まれた人気バンド、ドッケンの2ndアルバム「トゥース・アンド・ネイル」からの最大のヒット曲がこのバラード「アローン・アゲイン」。彼らの出世曲となったこの曲はビルボードチャート全米64位まで上昇しました。
この「アローン・アゲイン」はドッケンらしい日本人の琴線に触れる哀愁漂うメロディが炸裂するシンプルなバラードです。しかしこの曲に関してはシンプルだからこそいいといっていいでしょう。ギターヒーロー、ジョージ・リンチも曲の雰囲気は壊さずにしっかりと凄テクを披露してくれています。
ドン・ドッケンの繊細なヴォーカルはハードな曲よりもこういった曲でこそ真価を発揮します。その意味ではドッケン最強の曲といえるでしょう。この「アローン・アゲイン」のクレジットはドンとベースのジェフ・ピルソンとなっています。
■ホーム・スウィート・ホーム/Home Sweet Home(1985年)
モトリー・クルー/Mötley Crüe
このモトリー・クルーもLAメタルが輩出したバンドで、LAメタルムーヴメントで最も成功したグループといっていいでしょう。ここでご紹介する「ホーム・スウィート・ホーム」は彼らの3rdアルバム「シアター・オブ・ペイン」からの2ndシングルで、ビルボード最高位は89位です。
前作「シャウト・アット・ザ・デヴィル」がヘヴィネスに重きを置いた重厚なアルバムだっただけに、このアルバムでのよりポップさを増したロックン・ロール寄りのハード・ロックへの転換はかなり意表を突かれたのを覚えています。ちょっとだけヤンチャ寄り(笑)なモトリーファンの1コ上の先輩たちはブーたれてましたねぇ。
そんなモトリーの路線変更の最たる曲こそこの「ホーム・スウィート・ホーム」でしょう。ドラムのトミー・リーのピアノ(!!!w)から入るこのモトリーを代表するバラードはよく言えばドラマティック、悪く言えば仰々しいのですが、そこが良さでもあります。「クサい」程のメロディアスが逆にクセになる名バラードです。
■ウォンテッド・デッド・オア・アライヴ/Wanted Dead Or Alive(1986年)
ボン・ジョヴィ/Bon Jovi
日本ではデビュー当時から人気だったボン・ジョヴィをワールドワイドでのスーパーバンドに押し上げた彼らの3rdアルバム「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(洋題は”Slippery When Wet”)」。全米ビルボードチャート8週連続1位、全世界でのセールスは3000万枚近くを記録したこのモンスターアルバムからの4thシングルが「ウォンテッド・デッド・オア・アライブ」。ビルボード最高位は7位を記録した、ボン・ジョヴィを代表する名バラードです。
この曲は何と言ってもギタリストのリッチー・サンボラです。やっぱボン・ジョヴィはこの人がいなければと再認識させてくれる曲です。
リッチーのむせび泣くようなギターとジョンと対等に渡り合うバッキング・ヴォーカル。とにかくシブい、カッコいい、ただひたすらカッコいい。アメリカンロックの素晴らしさを堪能できる、いい意味での土臭さを感じることが出来る曲ですね。
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