冠番組をいくつも持ち、番組MCとしてテレビでその顔を見ない日はない、恐らく日本で最も忙しい芸能人の一人であろう坂上忍さん。
バラエティや情報番組での司会やタレント活動がメインとなっている坂上さんですが、もちろん本職は俳優。しかも子役で3歳でデビューし、天才子役として大ブレイクしたというキャリアの持ち主です。坂上さんより少し年下である昭和40年代生まれのわたしの世代には「俳優・坂上忍」の記憶がハッキリと残っているのですが、若い世代には坂上さんを“俳優”といってもイマイチピンとこない人も多いかもしれません。
そこでここでは、わたしなりの坂上さんの代表作といえるドラマをご紹介してみたいと思います。
そのドラマこそ、1984年にTBSで放送された「中卒・東大一直線 もう高校はいらない」です。
ホーム・学園ドラマだが大学入学資格検定(大検)を世間に知らしめた社会派ドラマの一面も…
ジャンル:ホームドラマ・学園ドラマ
放送期間:1984年2月3日~3月30日
ドラマ枠:TBS金曜夜8時連続ドラマ枠
放送時間:毎週金曜日20:00~20:54
放送回数:全9話
制 作:ヴァンファイル、TBSテレビ
脚 本:佐伯俊道、斉藤博、酒井あきよし
演 出:大槻義一、森田光則
主題歌 :THE MODS「バラッドをお前に」
主 演:菅原文太
TBSの金曜夜8時の1時間ドラマ枠で1984年(昭和59年)に放映されたホームドラマ、学園ドラマが「中卒・東大一直線 もう高校はいらない」です。TBS金曜8時といえば、「3年B組金八先生シリーズ」や「うちの子にかぎって…」「家族ゲームシリーズ」など当時の大ヒットドラマを多数輩出したドラマ枠ですね。
このドラマの原作は教育者の磯村懋(いそむらつとむ)氏。自身の体験を綴った手記「奇跡の対話教育―高校へ行かないで、東大・京大に合格するまでの記録」を基に制作されています。
このドラマが放映されるまで、大学入学資格検定(通称:大検 現在の名称は高等学校卒業程度認定試験)の存在は世間であまり知られていませんでした。しかしこのドラマで大検が認知されるとともに、高校に進学せずとも大学に入学できるという事で若者たちの選択肢は広がったともいえます。
そういう意味でも社会的に実に存在意義の大きい社会派ドラマの側面も強いドラマでしたね。
「中卒・東大一直線 もう高校はいらない」のあらすじ・ストーリー
磯田浩(菅原文太)は地元で学習塾を経営しながら妻や子どもたち、磯田一家を養う家族の大黒柱。
管理主義・エリート主義という従来の学校教育に疑問を抱く浩は、制服を嫌って私服登校という道を選んだ長男の一(坂上忍)に対する学校の態度に失望し、一を支えながら既存の学校教育と戦っていく道を選ぶ。
この事件を発端として浩の妻・初子(由紀さおり)や長女・則子(今井理恵)、次男・望(前田正人)、次女(石井ひとみ)らも巻き込み、家族でも学校とは何かを深く考えていく事となっていく磯田家。
一の担任であり学年主任でもある教師・北見(長塚京三)は一の言動を何かと目の敵にして対立は深まり、学校も磯田家に好意を持つ教師、反感を持つ教師とに分かれていく。
そして中学卒業後の進路選択を迫られた一は、高校に進学せず大学入学資格検定を取得して東大(東京大学)を目指すという決断を下すのだった…
「中卒・東大一直線 もう高校はいらない」主要キャスト 実質主演・坂上忍の代表作
では「中卒東大一直線」の主要登場人物とそのキャストをご紹介しておきます。
登場人物名 | 演じた俳優名 | 備考 |
---|---|---|
磯田浩 | 菅原文太 | 主人公 |
磯田初子 | 由紀さおり | 浩の妻 |
磯田一 | 坂上忍 | 磯田家長男 |
磯田則子 | 今井理恵 | 磯田家長女 |
磯田望 | 前田正人 | 磯田家次男 |
磯田大作 | 岩瀬威司 | 磯田家三男 |
久美 | 有森也実 | 本作のヒロイン的存在 |
真理子 | 比企理恵 | 一の知人 |
役名不明 | 三好圭一 | |
生徒役 | 工藤静香 | |
役名不明 | 谷隼人 | 一の2年生時の担任教師 |
藤 | 辺見マリ | 一の通う中学の教師 |
原口 | 新井康弘 | 望の担任教師 |
北見 | 長塚京三 | 一の1・3年時担任・学年主任 |
こうして見てみると、主演こそ菅原文太さんですが、物語の中心にいるのは磯田一である事がお分かりいただけると思います。
実はわたしもリアルタイムでこのドラマを見ていましたが、主人公は磯田一で主演は一を演じた坂上忍さんだと長年にわたって認識してしまっていました(苦笑)。まあそれくらい出演当時16歳の坂上忍さんの印象が強いわけです。ぶっちゃけ、事実上の主人公は一だといってもいいと思いますね。
長いキャリアを持ち数多くのドラマや映画作品に出演してきた坂上忍さんですが、わたしはこのドラマこそ彼の代表作の一つだと思っています。バラエティの坂上さんしか知らない人はびっくりするかもですね。それくらい素晴らしい演技でした。
天使の可愛さ・有森也実に悪役の長塚京三、ドラマデビューの工藤静香は生徒役
そして一の同級生役の有森也実さんにも触れない訳にはいかないでしょう。当時まだ16歳でしたがとにかく可愛かった。まさに天使、ヒロインでしたね。「東京ラブストーリー」の関口さとみ役で一気にブレイクするのがこの7年後となります。
そしてドラマにおける悪役ともいえる北見先生を演じたのがベテラン俳優の長塚京三さん。神経質そうで腹に一物を秘めた長塚さんの演技は強烈でしたね。あの憎たらしさ(褒め言葉ですw)はこのドラマである意味一番存在感を放っていました。だからこそ最後の場面での一とのシーンがより感動的となりましたね。このドラマで初めて長塚京三という俳優を知りました。当時からホントに素晴らしい俳優さんでした。
その他には、同枠の「家族ゲームシリーズ」で主人公の兄を演じた当時ジャニーズ事務所所属の三好圭一さんも出演していました。
なお、後におニャン子クラブメンバーとなる工藤静香さんのデビュー作はこのドラマです。なんとその年齢13歳の中学1年生!…でも全然記憶にない(爆汗)
日本ロック界のカリスマ・THE MODS(ザ・モッズ)の名曲が主題歌に…ドラマ出演も?
このドラマが当時、特に若者の間で大きな話題となったのは、主題歌にTHE MODS(ザ・モッズ)のバラード「バラッドをお前に」が使用されたのも大きいでしょう。
THE MODSといえば日本パンク・ロック界の伝説的存在であり、多くのアーティストに影響を与え続けているレジェンドです。当時はシングル「激しい雨が」が日立マクセルカセットテープのテレビCMに起用され、若者に絶大な支持を得ていました。そんなTHE MODSの新曲がドラマ主題歌に…てわけで、そりゃもう教室は大騒ぎさ!てな状態だったわけです(笑)
ドラマ内では主人公の一たちがTHE MODSの大ファンという設定で、彼らのライヴを見に行き、そこで本物のTHE MODSが演奏している…というストーリーでしたね。確か「激しい雨が」を演奏していたと思います(30年以上前なのでうろ覚え苦笑)。
カリスマ性といい楽曲のカッコよさといい、まさに本物のロックバンドですね。このカッコよさに触発されたのか(笑)、この後坂上忍さんはロック歌手へと転身していくこととなります(ビリー・アイドルのカヴァー曲とか出してましたね)。
DVD/ブルーレイ化、再放送無しの幻の名作ドラマ
ご紹介してきた「中卒・東大一直線 もう高校はいらない」ですが、放送から35年以上経った現在でもDVD化、ブルーレイ化されておらず、BSやCSなどでの再放送もされていないのが現状となっています。故にファンの間では「幻の名作ドラマ」と呼ばれています。
というわけで、わたしも35年以上も前の記憶を掘り起こしながらの御紹介という事を断っておきます。
それにしてもなんでこんな素晴らしいドラマをソフト化しないのでしょう。主要キャストの許可が取れない・何らかの不祥事を出演者が起こした・ただ単に採算が合わない…まあソフト化されないのには色々事情があるのでしょうが、最後の部分に関しては採算は取れると思います。わたしのようなリアルタイムで視聴していた世代は買う人多いのではないでしょうか。ま、自分は間違いなく買いますし(笑)。
とにかく、名優・菅原文太さんの珍しいホームドラマでのお父さん役に、現在時の人となっている坂上忍さんの代表作、そして工藤静香さんのデビュー作、THE MODSの主題歌と話題には事欠かないこの「中卒・東大一直線 もう高校はいらない」。TBSさん、ソフト化か再放送…何とか考えてみてもらえないでしょうか(涙)
コメント
観てました!懐かしいです‼︎まさに知る人ぞ知る佳作という印象のドラマでしたね。私も好きでした。全体的に落ち着いた印象のドラマだったと記憶しています。当時はまだイケイケな?演技の印象が強く、塾の父親役とは真逆のイメージだった菅原文太さんでした。が、抑えの効いた朴訥とした演技に感心し、文太さんの演技が好きになったのを覚えています。主演の坂上さんは当時としては当たり前の名演技で安心して見ていました。衝撃だったのは、有森さんですよね!私の中では今でも有森さんの最高傑作です!(失礼?)モッズは今でもたま〜に聴きます。笑
おぉ、リキ太さんもご覧になってましたか!!
ですよね、有森也美といえば「東京ラブストーリー」よりもこのドラマですよね。
個人的には長塚京三さんの「震える」演技が強烈に印象に残っています(笑)
長塚京三さん、本当に良い役者さんですよね。大河では草燃える他たくさん出演されていますが、私にとっての長塚さん最高出演作は「愛の嵐」という昼ドラです。このドラマ同様に憎たらしさこの上ない!(最高の褒め言葉です。笑) 憎たらしいだけでなく、人間の哀れさや滑稽さも醸し出しているところが…ほんとに良い役者さんですよねー。
「愛の嵐」懐かしいですね(笑)
「愛の嵐」はあまり見てませんでしたが、「華の嵐」は結構見てました。長塚さんはどちらにも出演なさっていたんですね。
ホントこの頃の長塚さんって憎たらしい役が多かったですよね(もち褒め言葉 笑)。サントリーのCMで好感度爆上げになりましたが、またゾクゾクするような悪役・敵役を演じてほしいです。
やはり「華の嵐」はご覧になっていましたか!笑
たしかにヒリヒリするような悪役をまたみたいですね。ここ最近の傾向として…昔悪役だった”バイプレイヤー”の方々が注目されるのは良いことだと思うのですが、その分ややコメディタッチの演技(演出)になっていますよね。遠藤憲一さんとかもシリアスな演技が映えますよね!
確かにそうですよね。遠藤憲一さんは売れっ子になって“いい人”役が増えましたが、シリアスな役があってこその“いい人”だと思います。
個人的にはテレ東の12時間ドラマ「壬生義士伝」で演じた永倉新八が最高にカッコよかったです。わたし的に永倉はエンケン以外に有り得ません。
観てました、観てましたよ。このドラマ、懐かしいなぁ。
主演の坂上さんとは同級生で、坂上さんを知ったのは、実はこのドラマが最初でした。この人がわたしと同じ年!?とは思えない名演技ぶりで、約36年経った今でも私の中では衝撃的(ドラマの内容も坂上さんの演技力も)でした。私の住む愛知でも放送から4、5年後に昼の時間帯に再放送してたのを記憶してます。当時の本放送は1984年でビデオデッキはまだ高額で一般庶民にはまだ普及されてなかったと思いますので当然我が家も記録したはずもなく、4、5年後の再放送時にやっと録画できたってことは覚えてますが、もう遠い昔のことでもうテープも無いかと・・・。
なんかムショウに観たくなってきました、どなたかYouTubeに上げてくれませんか?
よろしくお願いします。頼みます。
そう、リアルタイム視聴時はビデオデッキが最高級家電でしたよね。うちが買ったのも確か1986年くらいだったかと…
Youtubeに上がってないのもほとんどの人が映像を残していないからなんでしょうね 涙
リゾットさん、記事を書いてくださってありがとうございます!
このドラマ、テレビっ子だった私が小さい頃に見ていて、最も印象に残っているドラマです。
が、YouTubeはもちろん、情報がほとんどなかったんですよね。
でも、気になって検索していたらリゾットさんの記事を発見。
そうそうこの俳優さん出てた出てたって、記憶が少し蘇ってきて、本当に嬉しかったです!
坂上忍さんのドキュメンタリーかと思えるくらいの真に迫る演技と、私の中で悪い人の代名詞となってしまった長塚京三さんの存在、やるせない社会の不条理と闘うドラマの内容と、子供の心にずんと重いものがつかえるような印象を残したのがこの中卒東大一直線でした。
それから、当時は坂上さん演じる一のかっこいいお友達(三好圭一さんかなと思います)、好きでしたね♪
彼恋しさに毎週楽しみにしていたということもありました。
本当に懐かしいです。
もう一度見たいです。
リゾットさんのお力でTBSにかけあっていただけませんでしょうか?!
三好圭一さん…「家族ゲーム」の“ゆたちゃん”ですね。当時のうちのクラスの女子にも大変な人気だったことを思い出します。
残念ながらわたしは業界人でもなんでもないので何の力もありませんが(苦笑)、こうやって一人ひとりのドラマファンの声が届けば可能性はあるのではないでしょうか。坂上忍さんが大ブレイクを果たした今、局にとっても映像化のメリットがあるのは間違いないでしょうから…
横から失礼します。
三好圭一さん?誰⁇
って思っていたところに”ゆたちゃん”でイッパツで思い出しました!白川由美さんとセットで‼︎(笑)
家族ゲームはドラマ版も映画版も両方とも好きでした。映画版では宮川一郎太さんでしたっけ?
(久しぶりに蘇った記憶なので自信ありませんが…合っていますよね?)
それにしても”ゆたちゃん”はジャニーズだったのですね。
当時は全く気付きませんでした。今で言う風間俊介さんポジションだったのですね。
今は芸能界を引退されているのですね。カッコ良いのはもちろんですが、いわゆる”見た目”だけではない雰囲気をだされていましたのでもったいないですね。
風間俊介さんや生田斗真さんなど、今でこそ俳優専業のジャニーズは珍しくありませんが三好さんこそそのはしりといってもいい存在だったんですよね。
「家族ゲーム」は映画もテレビドラマもどちらも違った味があって面白かったですね。わたしの場合、ドラマが先であとで映画という順番だったので、最初は松田優作さんの吉本や沼田家、作品の独特すぎる世界観には違和感がありましたけど、年を取ってから見ると映画はやはり“名作”と呼ばれたのがよく理解できました。櫻井翔さん版は毒が足りなくてちょっと残念でしたね。まあこのご時世では致し方ないのかもしれませんが…
2月前に最終回だけですがYouTubeにアップされてましたよ!