「渡辺謙の80年代ドラマ代表作は?NHK朝ドラに大河ドラマ、「転校少女Y」「あなたが欲しい」等」では、渡辺謙さんの1980年代のドラマ代表作などをご紹介しましたが、ここではその後の90年代、さらには2000年以降のドラマ作品などについてご紹介します。
緒形拳や小林桂樹、田宮二郎らが演じた藤枝梅安を渡辺謙色に染める
1989年の角川映画の大作、「天と地と」の撮影中に急性骨髄性白血病という病魔に襲われた渡辺謙さん。心配するファンの声の中、約1年の闘病を経て戻ってきてくれました。
そんな復帰後の渡辺謙さんのドラマで大好きなのが、池波正太郎原作の傑作時代劇、「仕掛人 藤枝梅安」シリーズですね。1990年の12月に第1作目のスペシャルドラマが製作されて以来、全7作品が製作され、どれも高視聴率を記録した名作です。
過去に何度も映像化され、緒形拳、萬屋錦之介、田宮二郎、小林桂樹などの幾多の名優たちが演じてきた藤枝梅安。しかしそんな華やかな藤枝梅安の歴史に間違いなく新たな1ページを加えたのがこの渡辺謙版仕掛人藤枝梅安です。
とにかくはまり役という言葉がこれほどピッタリくる人選はいません。個人的に必殺シリーズ好きの自分からしてみれば、やはり必殺仕掛人で梅安を演じた緒形健さんの梅安が一番好きだったのですが、ぶっちゃけ緒形梅安以上に魅力的な梅安が渡辺謙版の藤枝梅安にはあります。
重厚で池波正太郎文学独特の様式美を持った仕掛人・藤枝梅安。そこに名優・渡辺謙の陰と陽の絶妙な演技が組み合わさったこのフジテレビの梅安シリーズはまさに藤枝梅安ものの中でも最高峰に位置するものだと断言します。フジテレビの時代劇プロデューサーだった能村庸一さんの手掛けた時代劇は傑作揃いですが、これもそんな能村時代劇の傑作の一つです。本当に素晴らしい作品ですので皆さん是非ご覧ください。
小説を超えた?人気シリーズへと成長した「御家人斬九郎」
1990年から1993年までスペシャルドラマとして単発で放送されたフジテレビの時代劇、「仕掛人 藤枝梅安」。そしてそのフジテレビと能村庸一(のむらよういち)プロデューサー、渡辺謙さんとの再タッグは1995年に実現しました。
2002年まで足掛け7年にわたって5シリーズが作られる事となる人気時代劇、「御家人斬九郎」シリーズのスタートです。
藤枝梅安シリーズは池波正太郎作品でしたが、こちらも原作は大物作家、柴田錬三郎原作小説です。原作自体の元ネタが少なかったために長期のシリーズ化が危ぶまれましたが、主演渡辺謙の素晴らしい斬九郎ぶりと、脇を固める岸田今日子さんや益岡徹さん、若村麻由美さんらのハマりっぷりもあってオリジナルストーリーも大人気となって長期シリーズ化することとなりました。
個人的にはどのエピソードも全部あらすじを言えますよ(笑)。何回も見てるんでね(笑)。
個人的に言わせてもらうのであれば、これを見ずして渡辺謙を語るなかれ!!って感じでしょうか(えらそでスンマセン)。
正反対の藤原家英雄を演じて見せた壮大なスペクタクル大河「炎立つ」
そして1990年代の渡辺謙さんのお仕事で藤枝梅安、御家人斬九郎とともに絶対に忘れてはならないお仕事がこれです。
1994年のNHK大河ドラマ、「炎立つ(ほむらたつ)」。1987年に主演した「独眼竜政宗」以来の謙さんの大河ドラマへの帰還作でもあります。
この炎立つですが、簡単に内容を説明しておきますと、全体が3部作になっています。各部の詳細は以下の通りです。
部数 サブタイトル 主人公 俳優
第1部 北の埋み火 藤原経清 渡辺謙
第2部 冥き稲妻 藤原清衡 村上弘明
第3部 黄金楽土 藤原泰衡 渡辺謙
こういった内容です。平安時代後期に奥州に巨大王国を築いた藤原家の興亡を100年以上の長期にわたって描いた、まさに途方もないスケールの大作なのです。
この3部作で謙さんは1部と3部の主人公を務めています。1部は非業の最期を遂げた奥州藤原家の開祖、藤原経清(ふじわらのつねきよ)。そして第3部は奥州藤原家四代目にして最後の当主・藤原泰衡(やすひら)。
どちらも最後は敗れて非業の死を遂げる悲劇的な主人公です。1部の藤原経清という人物は非常に正義感に溢れた人間で、義によって源氏を裏切って俘囚の長である安倍氏に加勢し、敗れて源頼義に刃こぼれした鈍刀でノコギリ引きの刑に処せられて最期を遂げるという主人公です。
片や3部の主人公、藤原泰衡は聡明な平和主義者であり、奥州平泉の平和のために奔走しながら最期は源頼朝によって滅亡させられるというこちらも悲劇の主人公でした。
どちらも凄いとしかいいようがありませんね。わたし的にはこの「炎立つ」の渡辺謙の方が、独眼竜の頃よりもはるかにレベルアップした凄味を感じます。俳優としてのスケールが大幅にアップしたというか、何というか。上手く表現できませんが、この炎立つを見てもらえば恐らく納得していただけるはずです。
とにかく凄い・・凄すぎる・・それしか言いようがありません。謙さんの大河といえば独眼竜というイメージなのでしょうがとんでもない。この炎立つは独眼竜に全くひけを取っていない名作です。
復活の1990年代を経て、いよいよ世界へと羽ばたく2000年代へ・・
というわけで病魔を退けて復活した1990年代の渡辺謙さんのテレビドラマを独断と偏見でご紹介しました。
なんであれが入ってねーの?いやいや、これ入るんならあれ入ってねーとおかしいっしょ?など、謙さんファンであればあるほど異論もございましょうが、そこはご容赦ください。わたしも全ての作品を見ているわけではないので。
しかも無類の時代劇好きという事でかなり時代劇に寄っているのもご容赦ください。もちろんこの時代の現代劇も素晴らしい作品は沢山ありました。「鍵師」シリーズとか、高倉健さんの映画でお馴染みの「居酒屋兆治」とか。
とにかく、現代劇でも時代劇でも、映画だろうとドラマだろうと絶対に外れがないのが渡辺謙という俳優の凄いところです。どの作品でも必ず満足させてくれます。まさにプロの仕事といってもいいでしょう。
飛躍の80年代、復活の90年代を経て、いよいよハリウッドスター、渡辺謙が誕生する21世紀へと入っていく事になるのですが・・それはまた別の機会にご紹介することとしましょう。
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