youtubeを始めとする動画サイトの躍進によって現在はかつての勢いが無くなったと言われているMTV。
しかし1980年代から90年代にかけては、このMTVでへヴィローテーションになる事こそがアーティストにとってヒット曲を生み出せるかどうかのカギを握っているとさえ言われるほど、音楽業界に多大な影響を及ぼすものであったのです。
そこでここでは、30年以上に渡るMTVの歴史の中で、音楽業界に強烈なインパクトを残し、ロック史の流れを変えたとさえ言われている傑作PV(プロモーション・ビデオ)のベスト5をご紹介します。
1983年 マイケル・ジャクソン(Michael Jackson) 「スリラー(Thriller)」
もはや説明不要の名作MVですね。
これまでにおいても世界のトップアーティストであったマイケル・ジャクソンですが、この「スリラー」のPVによって音楽界のレジェンドの座を決定付けたと言ってもいいでしょう。
恐らく音楽好きの40代以上の人であれば、一度は見た事があるはずのこのPV。わたしも学生の頃はこのダンスをクラスのみんなで踊っていたものです(遠い目)。それほどの影響力を持っていたのがこの時代のマイケル・ジャクソンであり、その原動力の一つがこの「スリラー」のPVだったのです。
このスリラーのPVですが、時間は何と13分34秒!アルバム収録の曲の時間が5分57秒なので、PVは倍以上の時間となっています。それだけ映像部分が多いという事です。
予算も破格です。この当時の一本のPV製作費が役1000万円程度であったのに対し、このスリラーのPV製作費は1億円以上。通常の約10倍の製作費をかけて作成された、まさにちょっとした映画ともいえる豪華なビデオクリップなのです。
マイケルの天性のシンガーとしての実力、そしてダンサーとしての才能、そこにクインシー・ジョーンズの作曲能力、アメリカを代表する映像技術者たちの努力が結集した、まさにMTV創世記を代表するPVであり、恐らく世界一有名なPVと言えるでしょう。
「これを見るだけでMJの凄さ分かる!!」
そう断言してもいいほどの完成度を誇るプロモーション・ビデオですね。
1985年 a-ha(アーハ) 「テイク・オン・ミー(Take On Me)」
これもMJの「スリラー」と並び称される歴史に残る名作PVですね。
ノルウェーの若手無名バンド、a-haはこのPVによって一気にブレイクしてビルボードチャートの1位を獲得してスターダムにのし上がりました。
ヴォーカルのモートン・ハルケット、キーボードのマグネ・フルホルネン、ギターのポール・ワークター・サヴォイのメンバー三人の実力やルックスの良さなど、a-haの実力も勿論ですが、このテイク・オン・ミーの大ヒットはやはりこのPV無くしては有り得なかったでしょう。
今では当たり前となりましたが、30年前の当時としては斬新過ぎるロトスコープを使ったアニメと実際の人物の実写とを巧みに組み合わせたPVは、瞬く間にMTVのへヴィ・ローテーションとなってビルボードチャートを駆け上がる事となったのです。
スケッチアニメ風のシンプルなアニメーションに加えて、ノルウェーのバンドらしい北欧のポップで爽やかなサウンド、そしてヴォーカリストのモートンの美しいファルセットを多用した透き通るようなメロディ・ラインが一体となって織り成す映像美ですね。
この曲も多分40代以上の人たちは一度は聞いた事があるのではないでしょうか。それほどまでに現在までも多大な影響を与え続けている曲です。
本編とは全っ然関係ありませんが(苦笑)、中学校時代にこのa-haにキャーキャー騒いでたクラスの女子たちを昨日のことのように覚えています。ついこの間まではデュランデュランだったのに・・女の変わり身は早いなと初めて感じた瞬間でもありましたね(笑)。
1985年 ダイアー・ストレイツ(Dire Straits) 「マネーフォー・ナッシング(Money for Nothing)」
うーん、渋い・・何百回聞いた今でも全く色あせない・・まさに名曲中の名曲ですな。
1985年に発表されたダイアー・ストレイツ最大のヒットアルバムとなった「ブラザーズ・イン・アームス(Brothers in Arms)」に収録されている全米ナンバーワンヒット曲がこの「マネー・フォーナッシング」です。
ブラザーズ・イン・アームズはアルバムとして全世界でこれまでに3000万枚以上を売り上げているモンスターアルバムです。本国イギリスでは歴代7位となる売り上げを記録しており(上位にはビートルズ、クイーン、マイケル・ジャクソン、ABBAなど)、もちろん人気はあったのですが、それ以上に凄かったのがアメリカでの人気です。
本国イギリスより早く火がついたのはアメリカであり、その原因がこのPVです。
MTVでへヴィ・ローテーション入りしたこの「マネー・フォー・ナッシング」によってアルバム「ブラザーズ・イン・アームス」も全米1位に輝きました。もはやダイアー・ストレイツといえば、世界的には堂々たるレジェンドバンドなのです。
しかしこの日本では地味なんですよね。まあルックス地味ですからね。日本公演も1回しかやってないですし。派手さは無いですからね。玄人好みのバンドって感じですかね。
この「マネー・フォー・ナッシング」ですが、実は痛烈なMTV批判の曲なんですよね。このダイアー・ストレイツのフロントマンであり、ほとんどの曲を作っていたマーク・ノップラー自体がPV作成を重要視していなくて、嫌がるマークを説得して作らせたPVがこの「マネー・フォー・ナッシング」なのです。それがMTVのへヴィ・ローテーションとなってキャリア一のヒットになるんですから皮肉なものですよね。
コンピューターアニメを使用したこのPVは当時としては革新的なものであり、この曲の素晴らしさも相まってあっという間に火が付いたという感じでした。かくいうわたしもこのPVを深夜番組で見て、次の日には母親にお小遣いを前借りして(苦笑)アルバムを買いに行ったことを覚えています。
あ、忘れてましたがマーク・ノップラーの低音ヴォーカルと一緒に歌っている高音ヴォーカルはザ・ポリスのスティングです。この曲はノップラーとスティングの共作なのです。
にしても、日本公演が1983年の一度きりって・・自分小学生の時ですやん!リユニオンでもいいので一回だけでも日本で見たいんですけど、マーク・ノップラーももう67歳ですか・・厳しいかなぁ(涙)
1989年 メタリカ (Metallica) ワン(One)
今でこそへヴィ・メタル界の大御所となったメタリカですが、この当時はまだアンダーグラウンド色が強く、非常にアクの強いバンドでした(そこがたまらなく良かったのですが)。
そして、頑ななまでにプロモーション・ビデオを作らなかったメタリカが初めて作成したPVがこの「ワン(One)」なのです。
このPVは色々な意味で大注目を集めるPVでした。アンダーグラウンドの帝王と呼ばれたカリスマバンドが初めて作るPVがどんな内容になるのか?へヴィ・メタルファン以外からも大きな関心が寄せられていたのです。
そしてついに姿を現したそのPVの全貌。
一言でいえば、非常にシリアスなPVです。メタリカのメンバーの演奏シーンはモノクロ画面で黙々と演奏するシンプルなものなのですが、度々PVに挿入されている映像シーンは1971年の映画「ジョニーは戦場に行った」の一場面です。
元々この「ワン」は、映画「ジョニーは戦場へ行った」にインスパイアされてドラマーのラーズ・ウルリッヒとギター&ヴォーカルのジェイムズ・ヘットフィールドが書いた曲なのでこの曲のコンセプトに基づいて忠実に作られたPVであると言えますね。
戦争によって視覚・聴覚・嗅覚・言語能力の全てを失った主人公のジョニーが頭を振るモールス信号で「殺してくれ」と訴えるシーンは、ザクザクのリフとラーズのツーバスとシンクロして視聴者を身震いさせるような視覚・聴覚効果を与えてくれていますね。
カリスマ性を損なうどころか、ますますメタリカという存在を一般のファンにまでアピールする事に成功したミュージック・ビデオ史に残る名作といえるでしょう。
ちなみにこのビデオを見てから後追いで「ジョニーは戦場へ行った」を見た人も多いはず。わたしも実はそうです(笑)。
ハッキリ言って、映画自体は戦争や人間の尊厳について深く考えさせられる面白い映画だったのですが、見終わった後は非常に落ち込んでしまうような映画でしたね。ある種の心理的ホラーともいえるものかもしれません。
映画としては間違いなく面白いので興味のある方は是非ご覧ください。ただしもう一度言いますが、結末はハッピーエンドではありません。最悪のバッドエンドと言えるかもしれませんので悪しからず(苦笑)。
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