漫画家の水木しげるさんが平成26年11月30日、多臓器不全により死去されました。享年93歳。
かなりお年を召されていたのでいつかはこの日が来るであろうことは覚悟していましたが、いざとなるとやはり寂しいですね。
水木さんは鳥取県の境港市出身。不肖、このわたくしも鳥取県出身。鳥取県は鬼太郎を始めとする漫画・アニメを通じて町おこしをしようと力を入れており、水木さんの出身地・境港市にある水木しげるロードは、鳥取県を代表する観光地としても有名です。
水木さんと言えばゲゲゲの鬼太郎、鬼太郎と言えば水木さん、というくらい水木さんの代表作・ゲゲゲの鬼太郎は水木しげるさんとは切っても切り離せないですよね。
そんな水木さんの知名度を一躍高めるきっかけになったのが、あのNHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」です。
2010年に放送されたこのドラマは、水木さんの妻、武良布枝さんの自伝が原作であり、主人公である水木さんの妻を松下奈緒さん、水木さん役を向井理さんが演じて大ヒットしました。これを機に松下さんと向井さんも一躍人気俳優の仲間入りを果たした、出世作でもあります。
この「ゲゲゲの女房」はその後、吹石一恵さんと宮藤官九郎さん主演で映画化、さらに水野美紀さんと渡辺徹さん主演で舞台化もされ、原作本もベストセラーになるなど、一大ブームを巻き起こしました。
その恩恵はわが鳥取県にも還元されました。境港市の水木しげるロードは2009年までの年間観光客数の記録172万人を軽々と突破し、2010年の観光客数は370万人にも上り、町おこしの効果も上々でした。
このように水木さんは全国人口最小県である鳥取県にとってまさに県を代表する著名人であり、地域産業への大功労者と言ってもいい存在なのです。
鬼太郎の醍醐味は第2シリーズにあり
そんな水木さんのライフワークでもあり代表作でもある「ゲゲゲの鬼太郎」ですが、わたしもこの鬼太郎を見て育った世代です。
とは言っても「ゲゲゲの鬼太郎」は1968年に第1作がテレビ放送されて以来、最新作の墓場鬼太郎を含めて6度もシリーズ化されて放送されています。それ以外にもウエンツ瑛士主演で実写映画化されたり、実写ドラマや舞台化作品もあり、わたしに限らず、全世代にとって馴染みのある漫画・アニメと言えるのではないでしょうか。
わたしが見ていたのは主に1971年より放送された第2シリーズです。とは言ってもリアルタイムで見ていたわけではなく、小学校の頃に夕方放送されていた再放送を見て育ったクチですが(苦笑)
第3シリーズ以降の鬼太郎は、悪い妖怪をやっつける正義の味方というスタンスでしたが(墓場鬼太郎は除くw)、この第2シリーズは趣が少し違います。もちろん悪い妖怪と対決する正義の鬼太郎もいるのですが、妖怪と闘わなかったり、第3者としてストーリーテラー的な役割に徹する回なども結構あります。第3シリーズ以降の鬼太郎しか知らない人たちには是非見てもらいたい作品です。何故なのかというと、この第2シリーズこそが水木しげるという漫画家の真骨頂であり、水木しげるの世界観をもっとも具現化したものであると思うからです。
人間の狡猾さや汚さといった人間の持つ業の深さといったものを描きつつ、そこに妖怪たちが加わっていき、単純な正義VS悪という図式ではない世界が描かれます。妖怪が絶対悪というわけではなく、むしろ人間の方が悪という風に描かれたりする回もあります。
音楽も第3シリーズ以降のポップな路線とは違って劇中のBGMなどもおどろおどろしいものが多く、表現は適当ではないかもしれませんが、薄気味悪さは他のシリーズの比ではありません。熊倉一雄さんが歌うお馴染みの「ゲゲゲの鬼太郎」オープニングソングもやはりオリジナルだけあって未だに色あせない輝きを放っていると同時に、やはりおどろおどろしいものを感じますしね。
色々ありますが、自分的にこの頃の鬼太郎の一番の特色は出てくる人間の顔です。
妖怪ではなく、人間の顔です。
平べったい顔に上を向いた鼻、そして出っ歯。この第2シリーズの鬼太郎では出てくる人間の顔こそがポイントであり、何とも言えない水木しげるさん特有の世界観を醸し出していると私は思っています。この、時には妖怪よりも恐怖を感じる人間の顔にこそ第2シリーズの真髄があるといっても過言ではありません。
何度も言いますが、現在ではあまり再放送される機会も少ないこの第2シリーズ、見たことが無い方は見てみてはいかがでしょう。新しい水木しげるの世界が体感できることは間違いないですよ。
鬼太郎史上最も怖いトラウマ回はこれ!
さて、この第2シリーズですが、非常に恐ろしい回が何話かあります。
小学生の頃見ていて、あまりの怖さに一人でトイレに行けない夜もあったくらいです(笑)
全体的に画面は暗いトーンであり、BGMも薄気味悪いものが多くて登場人物の顔も水木さんの原作の個性的な人物像を最もよく反映している、まさに水木しげるワールドの真骨頂ともいえるこの第2シリーズでもわたしの胸に強く残っている話をご紹介します。
第43話 足跡の怪
自分的にはこれが文句なしのNO.1。小さい頃見て、数か月は夜一人でトイレに行けませんでしたからw
もともとは水木しげるさんが書いた、鬼太郎シリーズではないオリジナルの短編漫画が基になっています。まあこの回は水木しげるさんという不世出の漫画家が他の作家と一線を画している事を物語るに相応しい衝撃回となっています。
あらすじ
神隠しにあったという調査の依頼を受けた鬼太郎は、その神隠しの原因と考えられる「タイタンボウ」を祀ってある巨石の一部が削り取られているのを発見する。
それは2人の研究者が研究のために持ち帰ったものだと判明。その後、そのうちの山田に祟りが降りかかる。右手の小指が溶けてなくなった。その後、右目と鼻も同じように溶けてなくなる。祟りを恐れてもう一人の男・中村に石を返すよう頼むのだが、欲望の塊と化した中村は断固拒否。
結局山田は首から上の全てが溶けて跡形もなく消滅。そして首から上のない山田は何処ともなく走り去ってしまう。血のような赤い足跡を残して…その足跡を追っていくと山田の着ていた服だけが残されていた。首から下も全て溶けてなくなってしまったにも関わらず、血の足跡だけは先へと続いていた。
中村から石のかけらを取り戻した鬼太郎はその石を元の場所へと戻すが神隠しにあった人間は戻らない。
すると、そこへニトログリセリンを片手に持った中村が現れる。
中村も山田と同じ悲惨な末路を遂げ、中村の落ちた穴からはなんと…
というストーリーです。
字体に直すとあまり怖さは伝わらないかもしれませんが、メチャクチャ怖いです。てか、今のテレビでは放送できないと思います。怖くなった子どもの親からの抗議電話でテレビ局の電話回線がパンクする事間違いなしかと思われます(笑)。これを普通に夕方の地上波での再放送で見られていたのは幸運だったのかもしれません。
いやぁ、昭和時代の子どもたちはこれ見て育ってたんだから、ある意味凄いと自分でも思いますわw
これが自分的ダントツなのですが、自分の思い出せる限りでいうと、他にも「イースター島奇談」、「目目連」、「ダイダラボッチ」なども怖かったですね。
ただし、ただ怖いだけではなく、現代社会に生きる人間たちへの警鐘や皮肉のようなものが多分に含まれているのがこの第2期の特徴でもあり、そこは水木しげる先生が伝えたい重要な部分なのではないかと思います。
鬼太郎が世代を超えて人気を博しているのも分かる気がします。これからもわたしたちの子どもの世代、孫の世代、さらにその先の子孫まで…ゲゲゲの鬼太郎という作品は子どもたちに親しまれ続ける作品であり続ける事でしょう。
水木先生、本当にお疲れさまでした。ごゆっくりお休みください。
コメント
先程、妹とゲゲゲの鬼太郎の話になり、子供の頃ぼんやり覚えていた怖い話の回がどこかにないかと探していましたら、こちらで紹介されていてとても嬉しく思いコメントさせていただきました。
最後のギャーという悲鳴の後に血の足跡が映って終わり、という感じだったと思います(もし違っていたらすみません)とっても怖かったのを覚えています。
もう少し大きくなってから兄が「お寺のお化けより神社の神様の祟りの方が怖いねんで」と私に話した時にすぐこの話を思い出しました。妹は吉幾三さんが主題歌を歌う第3期を見て育っていたのでこれを教えてあげようと思います。