真田丸が始まる今だからこそ名作「新選組!」を見るべし 三谷幸喜大河の面白さとこだわりを復習するためにも

いよいよ1月10日の「真田丸」船出まで1週間と迫ってきました。

真田丸に関してはこれまでの記事でも書いてきたように、不安は全くありません。当たり前のように面白いものであると確信しています。

その理由の一つが、2004年に真田丸と同じく三谷幸喜が手掛けた「新選組!」です。

この三谷幸喜のNHK大河ドラマデビュー作品は他に類を見ない程素晴らしい出来でした。

大河ドラマが好きで好きでたまらないと三谷本人が語っていた通り、笑いあり涙ありの大河好きな人間が作った、大河好きのための傑作大河となりました。

真田丸が船出する今だからこそ、復習の意味を込めてこの素晴らしい作品をもう一度振り返ってみたいと思います。

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等身大の新選組隊士たちを描くことにこだわった三谷幸喜

この「新選組!」を作るにあたっての意気込みとして三谷幸喜は「新選組と言えばこの作品!と言われるような新選組ものの代名詞と言われるような作品にしたい」と語っていました。

そして彼の言う通り、わたしの中での新選組といえば三谷幸喜の「新選組!」をおいて他にないという存在となりました。確かに大河ドラマの歴史においてこの「新選組!」は視聴率的には特筆すべきものではありません。下から数えた方が早いです。しかし、DVDの売れ行きは凄かったそうです。つまり濃いファンが多かったという事でしょう。

わたしの叔父は何十年来の大河ファンだったのですが、このドラマは見ていなかったそうです。理由を聞くと「あんな軽いのは大河じゃないわい」と言ってました。重厚なドラマを望んでいる昔ながらの大河ファンにはこういう方も多かったのかもしれません。しかしいかにももったいないなと思ってしまいますね。見続けていればそんな既成概念など吹っ飛ばせるほどの面白さだと思うんですが。

確かに今までの新選組ものと言えば、例えば局長の近藤勇を片岡千恵蔵や三船敏郎、渡哲也などという当時40代~50代の大御所が重厚な近藤を演じる事が多かったのに対し、このドラマでは当時27歳のSMAP香取慎吾が演じました。その他にも副長の土方歳三役に当時28歳の山本耕史、1番隊組長・沖田総司役に当時22歳の藤原竜也などの若手を起用しました。このメンバーを見れば確かにこれまでの新選組ものに親しんできた人たちにとってみれば、軽く感じるのかもしれません。

しかし、実は三谷幸喜が起用した俳優たちの方がはるかに実年齢に近いのです。新選組結成当時に近藤勇は28歳、土方歳三27歳、沖田総司19歳(全て満年齢)なのです。享年にしてみても近藤33歳、土方34歳、沖田24歳なのです。この配役も徹底的にリアリティにこだわる歴史オタクの三谷幸喜らしいこだわりです。

新選組というのは池田屋事件において歴史の表舞台に登場しますが、それ以外では幕末においても日本史においてもそれほど重要な人物たちではありません。

彼らの多くは農民や下級武士、浪人であり、多摩の田舎道場で農民たちに剣を教える若者たちでした。そんな青年たちが武士に憧れ、本物の武士となるために武士よりも武士らしく生きた物語がこの「新選組!」です。

リアルな新選組の隊士達を描いたこの「新選組!」こそが新選組を描いた作品の決定版である理由の一つがここにあるのです。

新選組!を見るのなら総集編ではなく絶対に全49話を見るべし!!

わたしはこの「新選組!」を見た事の無い人に勧める時には、総集編ではなく極力全話DVD(Blu-ray)を見るように勧めています。確かに全話だと49話もあり、時間的に厳しい部分があるのは百も承知です。百も承知なのですが、どうしても第1話から全部の回を見てほしいのです。

三谷幸喜作品の特徴の一つに「伏線と回収の多さ」があります。この「新選組!」もご多分に漏れずそうです。第1話から後々のドラマのカギになったり仲間同士の友情や新選組結成後の厳しい法度への布石となる、重要な伏線が張られています。もちろんそれは後になって見事に回収されるのですが、総集編だとどうしても漏れが出てしまうのです。

これらの伏線とその結果はこのドラマを100%楽しんでもらうために全て見てほしいのです。

このドラマは、近藤や土方が新選組を結成する前の多摩時代や新選組結成前の京都時代を非常に長く描いています。浪士隊として京都へ到着するのが第14話で新選組結成に至っては第25話です。一見すると「この回は必要なのか?」と思える回もあります。しかし全49話見終わると、その一見無駄に見える回も非常に重要な話である事が理解できるはずです。1話たりとも、1シーンたりともいらないエピソードはないと断言できます。だからこそ、全話見てほしいのです。そうする事によって、最終回で近藤勇が新選組局長として最後を迎えた時にあなたに湧き上がるものは全く違ったものになるでしょう。

「神回」第33話と最終回。山南敬助役によって飛躍した堺雅人

この「新選組!」は大河ドラマであると同時に、新選組に青春をかけて若い命を散らしていった若者たちの群像劇でもあります。

近藤勇、土方歳三、沖田総司、山南敬助(堺雅人)、斎藤一(オダギリジョー)、永倉新八(山口智充)、原田左之助(山本太郎)、藤堂平助(中村勘九郎)、井上源三郎(小林隆)の主要隊士9人が物語の核となります。このすべてのメンバーのキャラクターが見事なまでに確立されています。だからこそそれぞれに対する思い入れが半端ないのです。

例えば山南敬助。演じたのは今をときめく人気俳優であり、「真田丸」で主演を務める堺雅人。山南という人物はこの9人の中で最初に亡くなります。新選組での活躍期間が短かったこともあり、今までの新選組の映画やドラマではあまり重要な人物として描かれませんでした。しかし、そんな山南敬助がこのドラマでは近藤や土方に勝るとも劣らない強烈なインパクトを残しています。全ては山南のその人物像をしっかりと確立させたからでしょう。

この山南の死を描く「新選組!」屈指の名作第33話「友の死」は放送したNHKへの反響がもの凄いことになったらしく、放送当日は電話回線がパンク寸前になったらしいです(笑)もちろん、内容のすばらしさに対する反響です。この第33回はNHKのその年のアンコールでも1位を取り、雑誌「ザ・テレビジョン」の最優秀作品にも選ばれた、「新選組!」ファンの中でも神回と呼ばれるほどの名作です。

この山南敬助役によって堺雅人の名は一躍有名になります。そして順調に大俳優への階段を昇っていくのです。

この第33話「友の死」と最終回「愛しき友よ」は涙なしには見れません。どうでもいいですが、わたしが映画やドラマを見て人前で涙を流したのは「火垂るの墓」と「新選組!」のこの2話だけです。しかも号泣です(苦笑)。しかし安っぽいお涙頂戴ではありませんよ。それぞれの人物や新選組に対する思い、友への想いをしっかりと丹念に描いてきたからこそです。

口の悪い評論家たちの中にはこの「新選組!」をコメディ大河などと呼ぶ人もいました。確かに笑いの要素は他の大河作品と比べて多かったです。しかし、この第33話と最終回をちゃんと見てそう呼んでるのでしょうか。もししっかり全てを見たうえでそう呼ぶのでしたらそれは致し方のない事だとは思うのですが・・

出番の少ない人物もしっかりキャラクターが立っている

特筆すべきは新選組主要隊士9人以外の隊士達のキャラもしっかり立っていたという事ですね。

この9人は上京して新選組を結成する以前からしっかりとキャラを描いていましたからキャラ立ちするのはわかるのですが、その他の隊士たちは出演回数は僅かであるにも関わらず、しっかりと視聴者にその存在を残させています。

わたしの中で特に思い入れが深いのが、八嶋智人が演じた武田観柳斎。お調子者の嫌な奴なんですけど、彼の最後がこれまた泣けるという・・これぞ三谷マジックといってもいいキャラでしたね(笑)最終回の最後に新選組のオープニングテーマに乗せてこれまでの回想シーンがあるのですが、一番泣けたのが武田観柳斎が出てきたシーンだったというわたしは少数派でしょうかwww

その他にも大倉孝二が演じた河合耆三郎や落語家・桂吉弥が演じた山崎烝、甲本雅裕が演じた松原忠司、生瀬勝久が演じた殿内義雄、隊士ではないですが山南敬助の恋人・明里を演じた鈴木砂羽などなど・・出番は少なかったですが、印象に残るキャラが多かったですね。

これらの隊士たち(明里以外)は皆非業の死を遂げるのですが、キャラの描き方が下手だと視聴者の思い入れが少ない分、非常に淡白なものになりがちですが、この作品ではそういう事はありません。全ては三谷幸喜のキャラ作りの妙とも言えるでしょう。明里などは実質数話の出演なのですが、助演女優賞をあげてもいいくらいの素晴らしさです。山南とのシーンは今思い出しても泣けてきちゃうんだよなあ(号泣)

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1話で1日、全49話で新選組にとって重要な50日だけを描いた革新性

この「新選組!」への三谷幸喜のこだわりに1話で1日を描くというものがあります。

普通の大河ドラマというのは、何十年にも及ぶ年月を描く大河ドラマの特性上、1話45分の間で数日から数か月、下手をしたら数年にも話が飛ぶというのは当たり前の話です。

しかし、この「新選組!」で三谷は1話で1日分の話にするという枷を自らに課します。例えば、先に述べた第33話であれば元治2年2月23日の出来事であり、最終49話は慶応4年4月25日のお話です。第1話だけは過去と現在両方の話なので2日間にまたがっていますが、他は全てこのように新選組の歴史の中での1日を切り取って描かれています。つまり、全49話で50日間だけなのです。

これは大変厳しい条件だと思います。描く方からしてみれば当然、1話の中で日にちを跨ぐ方が描きやすいでしょう。数十年の歴史を描くのですから当たり前です。それが大河ドラマというものだとわたしも思っていました。

しかしこの三谷幸喜が自らに課した枷は大成功だったと思います。

1話で新選組にとって重要な1日を描くことによって、物語は非常に濃密なものとなります。非日常だけでなく、日常の何気ない事も描かれたりします。ですが、そんな若者たちの日常を描くことでその隊士たちへの思い入れはますます深くなり、その人生への想いも深まるのです。非常に難しいミッションですが、三谷幸喜は見事にそれをやってのけています。1日1話というのは、舞台脚本を得意とする三谷幸喜の長所を思う存分生かせる設定という訳ですね。


いい意味で「スペシャル」な大河ドラマなのです

はい、まだまだ全然言い足りません。言いたいことはここまでの数十倍はありますwww

わたしが言いたいのは、とにかく全話見てみてくださいという事。

そして、大河らしくないとかそんな先入観や既成概念を排除してほしいという事。

全話見ればこのドラマがどんな大河ドラマよりも大河らしいという事に気づいてもらえるとわたしは確信しています。

このブログで事あるごとに言っているのですが、視聴率の良いものが優れたものではありません。逆に視聴率が悪い作品が劣っているというものでも勿論ありません。

100人の人が見たとしてもDVDを買う人が10人しかいない作品と、50人しか見ていませんがそのうち30人がDVDを買う作品、どちらがいい作品でしょうか。優劣はつけられないと思います。視聴者の満足度が非常に高いのがこのドラマの特色であり、視聴率が振るわなかったのに「新選組!」のDVD販売が他の大河に比べてずば抜けているというのはそういう事だと思います。

この「新選組!」は最終回終了後にも視聴者からNHKへ、要望が山のように寄せられたそうです。内容は、「近藤勇の盟友である土方歳三のその後を見たい」というもの。この意見を受けて、本放送終了の丁度1年後に近藤勇亡き後の土方歳三の人生を描いた「新選組!土方歳三最期の1日」が正月のドラマスペシャルとして放送されるのです。

ちなみに大河ドラマ全54作品のうち、本放送終了後に続編が作られたのはこの「新選組!」だけです。

この事実だけ見ても、視聴者と製作者であるNHKにとってこのドラマがどれ程特別な存在だったかがわかっていただけるのではないかと思います。

だからこそ、満を持して12年ぶりに大河ドラマに戻ってきた三谷幸喜の「真田丸」には大いに期待しているのです。

みなさん、2016年大河ドラマ「真田丸」を大いに楽しみましょう。そして、まだ見ていない人はこの機会にぜひ「新選組!」に触れてみてください。そして・・・・号泣するがいい!!(笑)

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