名作・池波正太郎の「真田太平記」を「真田丸」は超えられるか?比較すると見えてくる三谷幸喜の自信と覚悟と遊び心

みなさん大河ドラマなどの時代劇で歴史上の実在の人物を扱っているものを見て、その人物の適役と思う役者さんがいらっしゃると思います。

例えば、「織田信長役は自分の中で○○(俳優の名前)だなぁ」とか「色んな人が演じたけど、坂本龍馬は○○以外にはあり得ない」とか。

時代劇が好きであればあるほど、見ていれば見ているほど自分の中での「この人物はこの役者さん!!」っていうのがあると思います。

わたしにもあります。多くのドラマに登場する歴史上の有名人であればあるほど、あります。これは特に新しいドラマを見る時にあまりに強いフィルターの役目を果たしてしまいます。そのドラマの正当な評価を下せなくなってしまうのです。自分で描くイメージが強ければ強いほどその効果は大きくなってしまいます。実際には素晴らしい演技をしても、自分の中のイメージが固まりすぎていて、これでは駄目だという判断を下してしまうのです。

それではダメだと頭でわかってはいても、これがなかなか難しい(苦笑)これは自分にとっての永遠の課題となりそうな厄介なものです。

2016年大河ドラマ「真田丸」主人公は真田信繁!幸村じゃねーの??いや、敢えてそうするのが三谷幸喜なんですの中でも書いているように、来年のNHK大河ドラマは三谷幸喜脚本の「真田丸」です。「新選組!」以来12年ぶりの三谷大河の登場です。素晴らしい作品になる事は間違いありません。わたしにとってそれは疑う余地のない真実です(笑)

しかし、ここで厄介なのがわたしが描く「真田丸」の主要登場人物のイメージがすでにある作品で出来上がってしまっている事です。すでに「真田丸」を見る前からとても強いフィルターがかかった状態であり、ハードルは限りなく上がってしまっている状態なのです。

わたしの中での「真田丸」に対するハードルをここまで上げてしまっている作品とは、同じくNHKで放送された時代劇、

真田太平記」です。

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池波正太郎の代表作「真田太平記」

この「真田太平記」は1986年にNHK新大型時代劇という水曜夜8時からの枠で1985年4月から1年間放送されたドラマです。

この水曜夜8時のNHK新大型時代劇というのは、1984年から1986年までの3年間、大河ドラマが近現代史のドラマを扱ったために出来たものです。つまり、江戸時代以前の本来大河ドラマの定番である作品を大河ドラマの代わりに放送したものであり、現在では準大河ドラマとして本家の大河ドラマと同列に語られています。要はほぼ大河ドラマだという事です(ややこしくてすみません涙)。

この「真田太平記」ですが、大河ドラマファンの間でも本家大河ドラマの傑作に勝るとも劣らない評価を得ている大変なドラマです(というよりも、このNHK新大型時代劇にて放送された作品は全て素晴らしいのです!!)。自分の中でもこの作品に出会ってしまったために、この後に見た真田家を描くドラマには違和感を拭う事が出来ずにいます。それほど素晴らしいのです。素晴らしすぎるのです。

この真田太平記ですが、原作は司馬遼太郎と並んで戦後日本の歴史小説界を代表する大作家・池波正太郎です。「鬼平犯科帳」や「剣客商売」などで時代劇ファンにもお馴染みですね。

主役は「真田丸」主人公の真田信繁(幸村)の兄・真田信之(劇中においての呼称は源二郎または伊豆守“いずのかみ”)。演じるのは渡瀬恒彦。とは言ってもこの真田太平記、実質は信之と弟・信繁(幸村)、父・昌幸(劇中では安房守“あわのかみ”)の3人が主人公と言ってもいいでしょう。言ってみれば、「真田家の」物語です。弟・信繁(劇中では源二郎または左衛門佐“さえもんのすけ”)を演じたのが草刈正雄。父・昌幸を演じたのが“霊界からの使者”でありw国際的にも有名な大俳優、故・丹波哲郎。

そして真田家不倶戴天の敵・徳川家康役に歌舞伎役者・中村梅之助。現在ドラマで大活躍中の中村梅雀のお父さんです。そして息子・中村梅雀は家康の息子・徳川秀忠役(笑)。真田家の大恩人であり、越後の龍・上杉謙信の養子である上杉景勝役にベテラン俳優の伊藤孝雄。真田家に仕える忍び(劇中では草の者と呼ばれる)の頭領・壺谷又五郎役に故・夏八木勲。真田の女忍び・お江役に宝塚出身の遥くらら。

上にあげた面々はわたしの中でもうその人物そのものとして定着してしまっています。それほど役としてハマりすぎてしまっています。大作家・池波正太郎の代表作の一つでもあるこの真田太平記は名作家の代表作という名に恥じぬほどの名作であり、さらに演じた俳優たちが実力者揃いの上にそのポテンシャルを100%発揮しているのですから、凄い作品にならないわけがないんですけどね(苦笑)。

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三谷幸喜のキャスティングの狙いや小ネタ

真田太平記における俳優さんを真田丸でのキャストと対比してみると

登場人物      真田太平記    真田丸

真田信繁(幸村)  草刈正雄     堺 雅人
真田信之      渡瀬恒彦     大泉 洋
真田昌幸      丹波哲郎     草刈正雄
徳川家康      中村梅之助    内野聖陽
徳川秀忠      中村梅雀     (未発表)
上杉景勝      伊藤孝雄     遠藤憲一
真田忍びの頭領   夏八木勲     寺島 進
真田の女忍び    遥くらら     (該当者なし?)

いやいや比較してみるとこれがなかなか。十分に太刀打ち出来そうな感じがしませんか?

特にわたしが注目するのが徳川家康に内野聖陽さんを持ってきたこと。我々がイメージする家康像とは全く違います。真田太平記の中村梅之助は世間一般のイメージする家康像そのままでした。「貫録があって人望があり、策略家の食えないタヌキ親父」。そんな家康像を見事に体現していました。三谷幸喜はあえてそんな家康像を覆そうとしているのだと思います。大河ドラマ「風林火山」で見事に曲者・山本勘助の若き日から壮年期までを演じ切った内野聖陽。新たな徳川家康を誕生させてくれそうな期待がプンプンしますね。

あとは上杉景勝。伊藤孝雄さんの景勝はそれはそれはカッコよすぎでした。特に裏切った真田親子が謝罪しに越後を訪れたシーンでの景勝は「まさに男とはこうあるべし!!」と言うほどでした。この伊藤景勝に対抗するのがエンケンこと遠藤憲一。景勝の事について書かれた歴史書によれば、景勝という男は口数が異常に少なく、いつも青筋を立ててしかめっ面をしているような武骨な武将だったそうです。恐らく三谷幸喜はこれを知ってて遠藤憲一を当てたのではないでしょうか。似合いませんか?いつもしかめっ面で口数の少ない遠藤景勝。最近コメディが多かった遠藤憲一ですが、久々に硬派なエンケンが見られそうですね。

真田忍びを束ねるお頭役に寺島進ってのもいいですね。寺島さんも硬派・軟派どちらも出来る俳優さんですが、三谷幸喜はどう描くんでしょう。夏八木勲さんの壺谷又五郎はその卓越した実力とカリスマ性で忍びを束ねる役どころでしたが、この辺りも楽しみです。

真田太平記では信繁を演じた草刈正雄さんが今回は信繁の父・昌幸役で出演されます。これも三谷幸喜ならではですね。前作「新選組!」でも土方歳三の兄役に土方歳三を何本も演じてきた栗塚旭さんを起用し、同じく沖田総司役を幾度も演じていた島田順司さんを、沖田総司に最後に刀を手渡す植木屋役として出演させています。こんな小ネタも三谷作品の醍醐味の一つなんですよね。それまでその題材を演じてきた役者さんや作品に対するリスペクトの意味を込めた粋な演出です。

敢えて名作に挑む三谷幸喜の覚悟と自信

この真田太平記は時代劇における傑作として、未だに長く語り続けられている作品です。初放送からすでに30年経っていますが、現在も時代劇専門チャンネルなどで放送されていますし、リアルタイムで知らなかった世代で見ている人も多いでしょう。

そんな真田太平記を歴史オタクで大河ドラママニアと自称する三谷幸喜が知らないわけがありません。あえてこの真田を題材に選んだ時点で真田太平記と比較される事は覚悟のうえでしょう。

だからこそ期待してしまうのです。真田太平記にとってかわる新たな真田を描いた最高傑作にするんだという三谷幸喜の自信と覚悟を感じます。

2004年に放送された「新選組!」は素晴らしいドラマでした。わたしが観た大河ドラマの中でも文句なしにベスト3に入る作品です。しかし、こと新選組関連のドラマにおいては三谷の新選組を見るまでわたしの中には「新選組といえばこれ!」というほどの定番ドラマがあったわけではありません。だからこそ三谷の「新選組!」こそが新選組となれたのだという意地悪な見方もできでしまうのです。

いわばハードルは極限まで上がりきった状態で始まる「真田丸」。見事乗り越えてくれると信じてあと3週間後の第1回「船出」を楽しみに待ちたいと思います。

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