名作大河ドラマ「太平記」 足利尊氏を真田広之が演じた大傑作 鎌倉末期~南北朝を描く魅力とは?

2016年放送の「真田丸」で通算55作目となるNHK大河ドラマ。近年は不調と言われながらも、このテレビ離れの時代に2桁視聴率を維持できる数少ないドラマでもあります。

1963年(昭和38年)の放送開始以来、数々の名作を生み出してきたこの国民的人気ドラマ枠の中で、とりわけ大好きなドラマである「太平記」についてここではご紹介したいと思います。

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NHK大河ドラマ第29作目「太平記」とは?

ジャンル :歴史ドラマ
放送期間 :1991年1月6日~12月8日
放送時間 :毎週日曜日20:00~20:45
ドラマ枠 :大河ドラマ
放送回数 :全49話
制 作 局:日本放送協会(NHK)
音   楽:三枝成彰
原   作:吉川英治
脚   本:池端俊策、仲倉重郎
主   演:真田広之
平均視聴率:26.0%
最高視聴率:34.6%

平均視聴率が26.0%で最高が34.6%という高い人気を誇った大河ドラマなのですが、それ以上にこのドラマで特筆されるべきことは、放送終了から四半世紀(25年)が経とうとしているにもかかわらず、多くの大河ドラマファンの間で今でも最高傑作と謳われているほどのドラマとしての面白さです。

わたしもその意見に概ね賛成です。最高傑作かどうかは断言できませんが、間違いなく自分が見てきた大河ドラマの中では最高傑作候補に入っているでしょう。

ドラマは全編硬派な内容です。言ってみれば、まさに大河ドラマの王道。音楽も本も俳優の演技も文句なし。まさに古き良き大河ドラマの全てがこの「太平記」にはあると言ってもいいでしょう。

吉川英治の原作と、NHKの大英断がこの傑作大河を世に生み出した

この「太平記」というドラマがなぜ大河ドラマファンからの評価がこれほどまでに高いのか?わたしが思うその理由を説明していきましょう。

まず、原作が素晴らしいという事が挙げられると思います。原作は戦前・戦後にかけての文豪・吉川英治。戦前に執筆した「宮本武蔵」があまりにも有名ですよね。そんな吉川英治晩年の代表作がこの太平記の原作となった「私本太平記(しほんたいへいき)」なのです。

戦前までは後醍醐天皇に反旗を翻した大罪人としてタブー的存在であった足利尊氏を主役とした小説であり、南北朝前後の動乱を描いた作品です。

このドラマを見て思うのは、やはり原作は大切だという事。吉川英治という大小説家の原作を採用したというのはこのドラマの成功にとって大きなウエートを占めていると思います。

さらには放送するNHKが敢えてこの南北朝時代を取り上げたという事でしょう。南北朝時代というある意味それまでタブーであった時代を取り扱う事、そしてその時代背景において敵味方が目まぐるしく入れ替わるという分かりにくさを視聴者に納得してもらえるかどうかというのが大きな問題であったという事です。

しかし結果的にNHKはこの「太平記」の制作に踏み切りました。その英断には素直に拍手を送りたいですね。だからこそこの名作を今でもみられるわけですから。この頃のNHKは「攻めて」ましたよね(笑)。ちなみに、鎌倉時代末期から南北朝時代を取り上げた大河ドラマは後にも先にもこの「太平記」だけとなっています。個人的な予測ですが、恐らくこれから先もこの時代が大河で取り上げられることは無いのではないかと思います。非常に残念な話ですが・・

三枝成彰が作る起承転結のオープニングはまさに神曲!

個人的に大河ドラマの大きな楽しみの一つでもあるのが、その壮大なオープニングテーマ。

どんなに素晴らしいドラマでも、OP曲がイマイチだと個人的には盛り上がりません(逆はもちろんダメですが笑)。

その点、この「太平記」のオープニングは大河ドラマ史でもベスト3に入るほどの出色の出来となっています。

担当したのは日本を代表する作曲家である三枝成彰(さえぐさしげあき)氏。

1984年放送のNHKスペシャルドラマ「宮本武蔵」でもオープニングテーマを担当しましたが、大河ドラマを手掛けたのはこの「太平記」が初となります(宮本武蔵も素晴らしいんすわ・・)。

出だしからこの混乱の時代を示唆するかのような雅楽的な入り。そして重厚な男性コーラスを経て一転、勇壮で躍動感あふれる本編へ。後はもう一気呵成に飲み込まれていってしまいます。これぞまさに「起承転結」。音楽とは何か?音楽の持つカタルシスをこれほどまでに感じさせてくれるオープニングテーマが他にあるでしょうか。

ドラマもドラマなら、音楽も音楽です。恐るべき作品と言わざるを得ませんね。

はまり役多数の奇跡のキャスティングはトレンディ大河という批判を吹き飛ばした!

実はこの大河ドラマ「太平記」、放送前はかなりの話題性でした。その理由は、その豪華すぎるキャストにあります。

主演の真田広之をはじめ、陣内孝則、柳葉敏郎という当時トレンディドラマで大人気だったトレンディ俳優(あえてこう呼びますがファンの方お許しを涙)たち、そして宮沢りえ、後藤久美子という、これまた当時のアイドル界では群を抜いて人気であった美少女たちを配したキャスティングは、別名「トレンディ大河」と揶揄する声もあったほどです。

これほど硬派で素晴らしいドラマでしたが、放送当時はこのように古くからの大河ドラマファンやメディアからは批判的な意見も多かったんですよね。しかしまあそんな外野の声は放送が始まって見事に吹き飛んでしまいました。内容で黙らせたと言ってもいいかもしれません。それほどまでに圧倒的なドラマだったのです。

そしてこのドラマの凄いところは、数々のはまり役を出したところでしょう。とにかくキャスティングが奇跡的といえるほどハマったドラマだと思います。そんな奇跡のキャスティングの中でも個人的に大好きな人物たちをご紹介していきましょう。

当初の主役は緒形直人?ハリウッドスター・真田広之の原点がここに

主役の足利尊氏(高氏)を演じたのが、当時アクション俳優から演技派へと脱皮しつつあった真田広之。今や押しも押されぬハリウッドスターですね。

次から次へと巻き起こる政争に嫌が応にも巻き込まれていく主人公を見事に演じました。決して主人公として美化されていた描かれ方ではなく、人間の弱みなども見せる人間臭さを見事に演じましたね。乗馬シーンや殺陣、そしてその他アクションシーンなどはまさに「絵になる」という言葉がぴったりでした。JAC(千葉真一主催のジャパンアクションクラブ)で看板を張った実力は伊達ではないという事をこれでもかと見せつけましたね。

足利尊氏については、とにかく戦の天才であるという評価が目に付くのですが、それを体現したような若武者ぶりでした。

当初はこの足利尊氏役には、当時人気がうなぎ上りであった緒形直人さんが予定されていたと聞きますが、個人的には真田広之さんで大正解だったと思いますね。真田さんでなければあの勇猛果敢な尊氏は出せなかったでしょう。ちなみに緒形直人さんはこの「太平記」の翌年の大河ドラマ「信長 KING OF ZIPANGU」で大河初主演を飾っています。尊氏=真田、信長=緒形、この配役の方がやはり正解だと個人的には思いますね。

間違いなく言えることは、真田広之の俳優人生においてこの太平記は間違いなく大きなターニングポイントといえる作品であり、今のハリウッドスターの原点ともいえるものでしょう。

奇抜な衣装に自由な生き様、まさにばさらを絵に描いた佐々木道誉

主役の真田広之とともに光ったのが、バサラ(婆娑羅)大名としてくせ者ぶりを如何なく発揮した佐々木道誉(ささきどうよ/または佐々木判官)役の陣内孝則。

常に一際目立つ奇抜な衣装、そして何を考えているかわからないその行動、大胆不敵な言動・・まさに「ばさら」という言葉がピッタリくるほどの怪演でした。

とにかくカッコよかったですね。この役は陣内孝則以外考えられませんね。あの何とも言えない独特のキャラクターは、多くの佐々木道誉ファンをこの世に生み出しました。ある意味「いい人」キャラの尊氏よりもこの自由人・佐々木判官(ささきはんがん)に惹かれた視聴者は多かったと思います。まあわたしもそのうちの一人なんですけどね(笑)。間違いなく陣内孝則という俳優の当たり役のひとつでしょう。

そして佐々木道誉と同じようにかっこよかったのが、鎌倉幕府打倒では尊氏の良きライバルであり共に戦い、建武の新政以降は袂を分かって尊氏と戦う事となった宿命のライバル・新田義貞。演じたのは根津甚八さんです(途中までは萩原健一さんでしたが、途中で病気降板)。

時代に翻弄された尊氏最大のライバル・「悲劇の武将」新田義貞

自由気ままに生き、何だかんだで尊氏の良き理解者であり続けた佐々木道誉とは違い、この新田義貞はまさに尊氏にとっての「宿命のライバル」。北条家との戦いでは戦友として、そして尊氏との決別以降は最大の敵として尊氏に立ちはだかりました。

この役も、個人的には萩原健一さんよりも根津甚八さんに交代で良かったと思います。新田義貞という悲劇の武将の持つ悲壮感のようなものを現すのには、やはり根津さんの方が敵役だったと思うからです。日本人は「滅びの美学」のようなものに惹かれてしまう部分があり、その意味ではこの新田義貞もそんな悲哀を現していました。

根津甚八さんの大河ドラマと言えば、「黄金の日日」での石川五右衛門役が一番に思い出されるかもしれませんが、個人的には五右衛門役と同じように印象に残っているのがこの新田義貞ですね。とにかくカッコイイのですよ。

ただ、この悲劇の武将・新田義貞のショーケンバージョンも見てみたかったという思いもありますけどね。全く印象がわかないのですが、それだけにひょっとしたら凄い新田義貞像が出来上がっていたのかもしれませんね。

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後醍醐天皇役に片岡仁左衛門、そして「大楠公」楠木正成役には武田鉄矢

この「太平記」での重要な人物と言えば、後醍醐天皇。その後醍醐天皇を演じたのが歌舞伎俳優の片岡孝夫(十五代目片岡仁左衛門)。

非常に難しい役どころでしたが、さすがは上方を代表する名俳優。その高貴なオーラはまさに他を圧倒する者でしたね。立ち居振る舞いといいセリフ回しと言い、まさにこれもはまり役でした。

そしてそんな後醍醐天皇に終生忠誠を誓い、散っていった大忠臣、「大楠公」こと楠木正成には武田鉄矢。

戦前まではまさに忠臣として義に生きた武将の象徴として国民的な人気を誇った楠木正成。戦後は手のひらを返したように取り上げられることの少なくなったこの名将を、武田鉄矢さんが熱演しましたね。

楠木正成の出自については諸説言われているのですが、この「太平記」では河内の土豪という説を採用しています。そのためか、土着した人間臭い楠木正成像となっていますね。しかしその軍略・知略はまさに尊氏を凌ぐほどであるという武将です。

河内の土豪として北条家打倒で大活躍し、そして散っていった楠木正成。これもまた武田鉄矢さんの大河ドラマにおけるキャリアの中では最高に輝いている役どころだと思いますね。

尊氏に立ちはだかる前半最大の敵・北条高時と長崎円喜(高綱)

物語前半での足利尊氏の最大の敵となったのが鎌倉幕府、北条得宗家です。

その北条得宗家最後の当主・北条高時を演じたのが当時人気絶頂のお笑い芸人だった片岡鶴太郎。この演技がまた凄かったのです。まさに俳優としての力量をこれでもかと見せてくれましたね。エキセントリックなそのキャラクター、そして狂気と哀愁を漂わせるその様は、まさにその後の俳優・片岡鶴太郎を決定付けました。それ程鬼気迫る演技でしたね

その高時の下で権勢をふるった長崎円喜も凄かったですね。長崎円喜を演じたのが、往年の名コメディアンであり、名ドラマ―、そして名優として名を馳せたフランキー堺。

このフランキー堺さんの長崎円喜も凄かったです。とにかく恐ろしいほどのオーラを感じさせる、まさに鎌倉幕府のラスボス的な圧倒的なオーラを放っていました。

暗愚でエキセントリックな大将・北条高時に対して、この円喜が放つのが最大の壁としての存在感です。

北条高時と長崎円喜(高綱)。この二人がいなければこの太平記は前半で離脱していた視聴者が多かったかもしれません。

個人的には文句なしの「太平記」前半のMVPですね。とにかく凄いです。特にこの二人が壮絶な最期を迎える第22話「鎌倉炎上」は必見です。

後半の重要人物、足利直義と高師直(こうのもろなお)

まだまだいますよ(笑)。まだ終わりません、それくらいはまり役多いんです(汗)。

後半戦に尊氏最大のライバルとして立ちはだかるのが、尊氏の弟・足利直義(あしかがただよし)。演じたのが、当時人気急上昇中だった高嶋政伸。

後に「秀吉」では主人公・豊臣秀吉の弟・豊臣秀長役を好演し、「大河ドラマ史上最高の弟役」と言われるようになりますが、その先駆けがこの「太平記」での足利直義役なのです。

血気盛んで兄を支えるよき理解者であった直義が、尊氏と対立して最後を迎えるまでの演技の変遷は、当時25歳の俳優とは思えない程の演技でした。2016年の大河「真田丸」では北条氏政役として鬼気迫る演技を披露してくれましたが、既にこの当時から凄かったのです。

そしてその足利直義と対立した足利家譜代の家臣・高師直(こうのもろなお)も絶対に外せません。演じたのが柄本明。

今や個性派俳優の代表として押しも押されもせぬ重鎮ですが、そんな柄本さんの俳優としての凄さを初めて知らしめさせられたのが、この高師直役でした。能面のような抑揚のないセリフ回しとその所作。しかしだからこそ得体のしれない恐ろしさを感じさせる名演でしたね。

フランキー堺さんの長崎円喜にしてもこの柄本明さんの高師直にしてもそうなのですが、敢えて声を張らない静の演技によって威圧感や恐ろしさを出していました。まさに名優ですよね。今の若い俳優さんには是非とも見習ってほしい演技だと思います。

「太平記」を見ずして大河ファンを名乗るなかれ?

他にも「亜相(あしょう)」こと北畠親房を演じた近藤正臣さん、金沢貞顕を演じた児玉清さん、尊氏の父・足利貞氏を演じた緒形拳さん、一色右馬介を演じた大地康夫さん・・ああ、書ききれん(涙)。

とにかく凄かったんですよ。凄すぎたんです。何度も言いますが、まさに「奇跡の配役」なのです。

このドラマを見ていただければ、先に述べたような「トレンディ大河」などという批判がいかに滑稽で的外れかは一目瞭然だと思います。

もしも今になってもこの「太平記」の事を「トレンディ大河」などと言う人がいれば、「あなたちゃんと見ました?」とつめたーい目で言ってあげましょう(笑)。

とにかく、大河ドラマファンを自認する人でもしもこの「太平記」を見ていない人がいるのであれば、絶対に見ておくべきです。じゃないと「もぐり」だっていわれちゃいますよ(苦笑)。

個人的にはこの「太平記」を今の時代にリメイクしたとすればどうなるか?誰をキャスティングするか?などと妄想することがたまにあります。それほど自分の中では印象深い名作ですね。

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