[時代劇事件史]藤田まことと菅井きんが降板で山崎努説得も?新必殺仕置人での主水シリーズ終了危機事件

日本を代表する時代劇といっても過言ではない必殺シリーズ。現在でもスペシャルドラマとして続いているこの老舗人気時代劇にあって、前期必殺シリーズの最高傑作という評価もあるのが「新・必殺仕置人」。

未だ必殺ファンの間で絶大な人気を誇るこの大ヒットシリーズですが、実は製作が危ぶまれた中でようやく作られたという逸話のある作品であり、下手をすれば必殺における「中村主水シリーズ」自体が最後となった可能性も多大にあるほどに必殺シリーズにおける危機を迎えていたことはあまり知られてはいません。

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山崎努、“二度同じ役は受けない”役者ポリシーを熱意で覆した仲川・山内P

「新・必殺仕置人」は、1977年(昭和52年)に放送が開始された必殺シリーズの第10作目となったドラマです。“新・”という表記からも分かる通り、1973年(昭和48年)に放映されて大人気を得た「必殺仕置人」の続編となるドラマです。

必殺シリーズの人気を決定付け、後のシリーズ化の流れを作ったともいわれるほどの人気作となった「必殺仕置人」。当然ながらその続編を求める声は大きかったのですが、続編を作るには大きく高いハードルがありました。そのハードルこそ、

「必殺仕置人」で念仏の鉄を演じた主演の山崎努さんの説得

という難題でした。

必殺仕置人といえば、やはり主人公である念仏の鉄を抜きにしては語れませんし、鉄無しに仕置人の続編は名乗れません。それ程に絶対的な存在でした。

しかし、山崎努さんにはある固い固いポリシーがある事で有名でした。そのポリシーこそ、

「一つの役を何度も演じていると飽きてしまうので同じ役は2度演じたくない」

というものでした。

そんな頑ななポリシーを持つ山崎努さんの説得にあたったのが、必殺シリーズの制作・放映を担当していた朝日放送(現:ABC)の担当プロデューサーである仲川利久氏とチーフ・プロデューサーである山内久司氏。必殺ファンにはお馴染みの名物プロデューサーです。

この二人の必死の説得によって、山崎さんは首を縦に振り、この「新必殺仕置人」への道は大きく開かれたのです。

ちなみに山崎さんが長い長い俳優キャリアの中で2度同じ役を演じたのは、この必殺シリーズにおける念仏の鉄以外では、火曜サスペンスで人気シリーズとなった「九門法律相談所」の九門耕作役が有名ですね。

主水役の藤田まこと、ED曲・エンドロールでのクレジット順問題

山崎努さんの続編への再登板という大きなハードルはクリアできましたが、まだ新・必殺仕置人制作への道は険しい障害が待ち受けていました。その険しいハードルこそ、

中村主水役の藤田まことさんの主演(クレジットタイトル)問題

でした。

記事「時代劇・必殺の中村主水(なかむらもんど)シリーズとは?」に詳しく書いていますが、「新・必殺仕置人」までに藤田まことさんは中村主水役で「必殺仕置人」「暗闇仕留人」「必殺仕置屋稼業」「必殺仕業人」の4シリーズに出演しています。既にこの時点で藤田さんの中村主水は「必殺の顔」といってもいい程の人気キャラクターへと成長していました。

しかしながら、必殺シリーズのエンディングテーマ時に流れるクレジットタイトル、いわゆる「出演者テロップ」において、過去のこの4作品での藤田さんは主演の定番であるトップクレジット(1番目)ではなく、トメ(出演者中の一番最後)だったのです。

藤田さんサイドは、既に中村主水シリーズの3作目となった「必殺仕置屋稼業」の時にはこのクレジット順に対して、トップクレジットへの変更を要請していたようですが、この仕置屋稼業のトップクレジットは市松役の沖雅也さんで、続く「必殺仕業人」でもトップクレジットは赤井剣之介役の中村敦夫さんとなり、藤田さんはどちらでもトメとなりました。さすがに「新・必殺仕置人」制作前の時点では藤田さんサイドもかなり強硬となっていたという事ですが、それもまあ致し方ないと個人的には思います。仕置屋稼業と仕業人は完全に中村主水が主人公といってもいいドラマでしたからね。ドラマの内容的にもキャラの人気でも完全に主人公なのにクレジットはトップではない・・という逆転現象だったといってもいいかもしれません。

こういった藤田さんサイドの要請を受け、制作サイドもトメにお蹴る藤田さんの表記を「起こし(藤田さんの名前だけ下から起き上がってくるような表示)」にしたりして工夫したようですが、まあ順番は変わらないわけで、根本的解決には至りませんでした。

降板辞さずという藤田まことさん側の覚悟に制作側も折れ、新・必殺仕置人ではトップクレジットに藤田まことさん、トメに山崎努さんという形で決着し、無事にクレジットタイトル問題は解決という形になりました。これ以降、必殺シリーズにおける藤田まことさんの中村主水はトップクレジットとして固定される事となったのです(東山紀之版必殺仕事人シリーズは除く)。

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菅井きん、実娘の結婚話に害が及ぶのを恐れて中村せん役降板を直訴

2度同じ役を演じないという山崎努さん、藤田まことさんのクレジットタイトル問題を解決して、さあいよいよ仕置人の続編だぜ!!とはいきませんでした。もう一つ大きな問題が残っていたのです。その問題こそ、

中村主水の姑・せん役の菅井きんさんの娘の縁談に係る必殺降板問題

です。

中村主水の妻、りつ(白木万里)の母であり、主水の姑として必殺シリーズ屈指の人気キャラとなっていたせんを演じる菅井きんさんが必殺シリーズ降板の意向を示していたのです。

必殺の顔・中村主水とその妻・りつ、そしてりつの母であるせんの三人はもはやこの時点で必殺シリーズになくてはならない顔ともいえる存在となっていました。職場では“昼行燈(ひるあんどん)”と呼ばれ、家ではせんとりつにいびられるという主水の表の顔は世のサラリーマンの共感を呼び、その表の顔と凄腕殺し屋の裏の顔とのギャップが人気の秘密であり、表の主水のイビリ役としてせんとりつは無くてはならない存在だったのです。

せんを演じた菅井きんさんの演技はそれはそれは素晴らしいものであり、わたしは今でも「日本一の姑女優さん」と思っています。ただただ意地悪なだけでなく、そこに加わるコミカルさも含めて、本当に最高の姑役でした。

しかし降板の理由がその演技力の高さというのが、何とも皮肉なものでした。

菅井きんさんの実の娘さんに良縁の話が持ち上がっており、菅井さんのこの中村せん役のあまりのリアルさによって、その縁談が破談になってしまうのでは?というものだったのです。菅井さんの迫真の演技力が仇になってしまうという、実に厄介な話だったのです。

この菅井さんの訴えに対し、製作スタッフは「新・必殺仕置人」制作予定を延期して菅井さんの娘さんの縁談が上手くいくのを待ったのでした。

その甲斐あって菅井家の結婚話はうまく運び、晴れて菅井きんさんは「新・必殺仕置人」で中村せんを演じる事が出来ました。

伝説の新仕置最終回の神回「解散無用」が誕生しなかったかもしれない恐怖

以上の3つの高い高いハードルを乗り越えた結果、必殺ファンに後世まで語り継がれる事となる傑作、「新・必殺仕置人」は誕生しました。

念仏の鉄役の山崎努さん、中村主水役の藤田まことさん、中村せん役の菅井きんさん、お三方とも誰が一人欠けても「仕置人」シリーズは成立しなかったでしょう。

わたしは本当にこの朝日放送のスタッフに心から感謝を申し上げたいですね。仲川さんや山内さんをはじめとする制作スタッフの執念にも似たこの努力なくして必殺シリーズの最高傑作とも評される「新・必殺仕置人」はありませんでした。全ての必殺シリーズの物語における最高傑作の神回とも称される最終回「解散無用」もなかったのです。

必殺ファンとしてこれが感謝せずにいられるでしょうか。本当にこの難局を乗り切ってくれた製作スタッフの皆さんに感謝感謝、ただそれだけですね。

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