NHK大河ドラマ「風林火山」はキャスト・OP・硬派な脚本全て◎の名作 伝説の軍師・山本勘助の生涯を描く

2016年の大河ドラマ「真田丸」は、個人的には久々に思い切り楽しめる大河ドラマとなっています。コメディ要素が強すぎるという意見も見られますが、わたしは気になりません。時代考証や史実、さらにはあの時代特有の価値観といった、大河ドラマに必要不可欠な要素という軸がしっかりしているからです。

近年の大河ドラマは、ネットなどで言われている「スイーツ大河」と呼ばれる大河ドラマの多さゆえに、本格的な大河ドラマを望む大河ファンには物足りない作品が多くなってきています。

スイーツ大河とは、ネット世界でのスラングであり、確かな定義は難しいのですが、とにかく「軟派な、ご都合主義な、甘い甘い、当時の価値観無視の「戦は嫌じゃ(キリッ)」!的な大河ドラマの事を指しています。ちなみにスイーツ大河認定作品は圧倒的に女性主人公の作品が多く、脚本家も女性脚本家のものが多いですね。

21世紀に入ると、脚本も女性が手掛ける事が多くなり、大河主人公も男性と女性がほぼ交互に選ばれる事が当たり前となってきています。当然「スイーツ率」は高くなっているのですが、そんな中、異常ともいえるほどの硬派路線で燦然と光り輝き、硬派路線を望む大河ファンの圧倒的な支持を受けている大河ドラマがあります。

その作品こそ、「風林火山」なのです。

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風林火山とは武田信玄が使ったと言われる武田家の旗に刻まれた孫子の一文

「風林火山」は2007年に放送された大河ドラマです。武田家を主人公とした大河ドラマは1988年の「武田信玄」以来、実に19年振りとなりました。

原作はノーベル文学賞の最右翼にも挙げられたこともある昭和の大作家・井上靖の人気時代小説。脚本は当時史上最年少の19歳で向田邦子賞を受賞した大森寿美男。

主演は当時39歳だった内野聖陽(うちのせいよう/当時はうちのまさあきという読みこの方)が大河初主演を飾りました。

主人公は武田信玄の軍師として有名な山本勘助。タイトルの「風林火山」とは、武田家の旗印に使われた古代中国・孫子の有名な一文の事を指します。

「其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆。」

疾きこと風の如く 静かなること林の如く 侵略すること火の如く 動かざること山の如し

ですね。あまりにも有名な言葉であり、戦国最強と謳われた武田家の勇壮さを示す代名詞にもなっています。

千住明のオープニングテーマはアドレナリン噴出の超名曲

この風林火山なのですが、とにかく徹底的に硬派な大河ドラマです。徹頭徹尾、硬派です。そして間違いなく面白いです。

オープニングテーマは現代を代表する音楽家である千住明が担当。このopがまた素晴らしい。これぞ大河!!と言いたくなるような勇壮で荘厳でアドレナリンが噴出する名曲なのです。まさにこれから戦場に向かうかのような高揚感を見る者に与えてくれます。

イントロ部分では主演の内野聖陽のナレーションで「疾きこと風の如く 静かなること林の如く 侵略すること火の如く 動かざること山の如し」と語られ、その語りが終わるやいなや、千住明の怒涛の名曲がフェードイン!オープニングは大河ドラマのもう一つの顔と言われますが、まさにこの名作ドラマの始まりに相応しい出来なのです。

オープニング映像は野を山を駆け巡る武田騎馬隊の映像を中心として構成されています。

上杉謙信と並んで戦国最強と呼ばれた武田家の最強の武器と言えば、武田騎馬隊。まさに武田家の強さを象徴したオープニングです。

このオープニングを見ただけで、名作ドラマの圧倒的なオーラを感じる事が出来るでしょう。

スイーツ大河には真似できない?貫地谷しほり演じるヒロイン・ミツの名セリフ

冒頭でスイーツ大河という言葉を出しましたが、スイーツ大河と呼ばれる大きな要素に、「時代背景を無視した平和主義の押し付け」というものがあります。主人公は「戦は嫌じゃ」「戦はいけませぬ」というポリシーの持ち主であり、現代人かと見まがうほどの徹底的な平和主義者として描かれます。

現代では当然の考え方なのですが、戦国時代や幕末などの激動期においては現代の価値観とは全く違います。なんせ、武士という職業そのものが戦を生業とする人たちなのです。常に戦は生活の一部であり、戦による死というのは常に隣り合わせでもありました。戦に駆り出される立場であった農民たちにとっては戦は勘弁してくれというものだったのでしょうが、武士階級の、しかも大名クラスやその身内の立場の人たちが露骨にこのような言葉を口に出すというのは違和感がありまくりなのです。

しかし、この「風林火山」はそのようなスイーツ路線とは無縁といってもいいでしょう。それは早くも第1話のある人物のセリフで分かってもらえると思います。

ある人物とは、浪人時代の若き主人公・山本勘助と恋仲になり、勘助の子を身ごもるミツ(貫地谷しほり)。このドラマの序盤のヒロイン的存在です。

第1話で勘助は、ミツを守るために武田家家臣を斬ります。そんな勘助に対して、ミツは野原に咲く花を摘みながらこう語りかけるのです。

「勘助、戦で人を殺した時には、こうして花を摘んだと思えばいい。恨みがあって殺したんじゃないから、そう思える・・この花は、人の暗い心にもまた咲く。わたしには見える、勘助の中に咲く花が・・。だから、だからわたしは勘助が怖くないの」(実際には訛ってますが標準語に直しました)

ミツのこのセリフは、「風林火山」の中でも屈指の名セリフとして今でもファンの間で語り継がれています。そしてこのセリフは勘助の人生において最も重要な言葉の一つとなります。

現代の多くの作品であればおそらく、人を斬った勘助に対してヒロインにこのようなセリフは言わせないでしょう。多分、「勘助、人を殺めてはいけません」だったり、「人を殺めずに済む世の中にしてください」とかなのだと思いますね(苦笑

ダークヒーロー・山本勘助の生き方は乱世を生き抜く戦国時代には当然の処世術

この作品の勘助は決して聖人君子ではありません。ダークヒーロー的な部分も持ち合わせています。野心を隠さず、己の器量で立身出世を夢見る人間です。若き日は己の出世のために、そして武田信玄と出会た後は武田家のために、彼は時には非情とも思える策を駆使してこの激動の時代を生き抜いていきます。それは現代の価値観に直せば「卑怯」ともいえるものもあります。しかし勘助は生きるためにどんな手でも使って生き抜きます。勘助はこの乱世を生き抜くために「修羅の道」を歩み続けたのです。これだけでも素晴らしい作品だとおもうのですが、そのうえ前述したミツのセリフなのです。

ヒロインにこんなセリフを言わせたら、恐らく視聴者の中には抗議の電話を入れる人もいるかもしれませんね。個人的には信じられない話なんですけど(笑

しかし、戦国時代は「やるかやられるか」の時代です。今とは比較にならない程人の死というものがすぐそこにあった時代です。やる立場とやられる立場は表裏一体のものであり、とても現在の価値観に当てはめられる程のものではないカオスの時代だったのです。

勘助のような何のバックボーンも持たない者や、農民として常に戦に翻弄されていたミツのような人間にとっては、生きるためには戦で生き残らなければならなかったのです。どんな手を使ってでも。そんな時代というものをこれほどよく現した場面とセリフは他にないと思いますね。

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ガクト、市川亀治郎、緒形拳や千葉真一などキャストは硬派・実力派・個性派揃い

徹頭徹尾硬派な大河ドラマと書きましたが、俳優陣もまさにそうです。

勘助がその生涯をささげた武田信玄役には歌舞伎俳優の市川亀治郎(現・四代目市川猿之助)。信玄の父であり、ミツの仇でもある武田信虎には仲代達也。

武田家の両職(りょうしき)と言われた板垣信方には千葉真一、甘利虎泰には竜雷太。勘助のライバルでもあり友でもある真田幸隆には佐々木蔵之介。

駿河の大名であり勘助とは因縁ある今川義元には谷原章介。武田家のライバルでもあり同名相手でもある関東の覇者・北条氏康には大衆演劇界のスター・松井誠。

物語全般のヒロインでもある由布姫役には柴本幸。勘助の幼馴染である矢崎平蔵を佐藤隆太。その他にも緒形拳、加藤武、小日向文世、市川左団次ら重厚な演技派の面々が連なります。

そんな中、最も話題となったのが、甲斐の虎・武田信玄の永遠の宿敵である越後の龍・上杉謙信役。この謙信役を、当時大人気歌手であったGACKT(ガクト)が演じた事も大きく取り上げられましたが、最も注目されたのはそのビジュアルです。

上杉謙信というと、まず思い浮かべるのが頭巾を被って法衣をまとった姿なのですが、GACKT演じた謙信は長髪で水干姿という出で立ち。これには賛否両論ありましたが、わたしは気になりませんでした。まああの法体姿は出家して名を上杉謙信と名乗った後のものですから、出家する前の「風林火山」ではあの姿でもおかしくはありません。何より、あのビジュアルだったからこそこのドラマには程よいアクセントになったとわたしは思います。ちょっと男臭すぎましたからね。まあそれがいいんですが(笑

とにかく、俳優陣もほぼ完ぺきな布陣なのです。

大河史に残るラストシーン。伝助の叫びは永遠に・・

物語は半生がほぼ不明であった山本勘助の若き日を脚本の大森寿美男氏が見事にオリジナル脚本で補完してくれました。冒頭のミツのセリフも大森氏オリジナルの物です。勘助という人物のキャラをこれでもかというほど引き出してキャラ立ちさせることに見事に成功しています。

そして武田家士官後は井上靖氏の名作をメインとして戦国のダイナミックさを見事に描き切っています。

ラストは日本史上に残る激戦と言われる「川中島の戦い」で終わります。甲斐の虎と越後の龍の宿命の対決です。

勘助は最期、絶体絶命の中で救援に駆けつけた武田信玄率いる騎馬隊を見届けてこの世を去ります。これ以上はここでは言いません。言葉をどんなに連ねても恐らくあのシーンの半分も凄さを言い表す事は出来ないでしょうから。

ただ、最後に勘助の盟友である伝助(有薗芳記)が「山本ぉーーっ、勘助にござりまするぅーーっ!!」と勘助を信玄の元に送り届けた場面は、数ある大河ドラマのクライマックスの中でも一二を争うほどの出来であったと思いますね。個人的には何十回も見てますが、何度見ても泣けます。

次にこんな硬派な作品を大河ドラマで見られる日が果たしてやってくるのでしょうか。わたしは信じていますよ、NHKさん(いやマジで笑

真田丸と風林火山のキャストを比べてみよう




ちなみに、2016年の大河ドラマ「真田丸」が好きな人は、この風林火山も楽しめる事を保証します。

佐々木蔵之介演じる真田幸隆は、真田丸主人公の真田信繁(堺雅人)の祖父であり、真田昌幸(草刈正雄)の父です。清水美沙さん演じる忍芽(しのめ)は、真田丸のおとり(草笛光子)おばあさんの若き日です。ちなみに真田昌幸も子役で出演しています(笑

真田丸序盤で切腹した御館様・武田勝頼(平岳大)は、今や演技派若手俳優として不動の地位を築いている池松壮亮が若武者時代の諏訪勝頼を見事に演じています。

真田丸では真田家の宿敵として描かれた北条家の四代目当主・北条氏政(高嶋政伸)。風林火山では若き日の氏政を、大衆演劇のニュースター・早乙女太一が演じています。

どうでしょうか。なかなかに面白いですよね。しかも、当時まだ青年だった早乙女太一さんや池松壮亮さんは今や堂々とした一流として大活躍しているのですから、この当時キャスティングしたNHKの慧眼には驚かされます。

真田昌幸の悲願であった武田家最盛期の武田領の奪回。武田信玄存命中の武田家の全盛期、その全盛期がこの「風林火山」の中には描かれています。

真田丸を見た後にもう一度この風林火山を見返してみると、色々な意味で感慨深さに浸れること間違いなしですよ(笑

とにかくもう一度だけ言います。大事な事なので。真田丸や風林火山のような大河ドラマをどんどん作ってくださいね、NHKさん♪

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